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2019年5月

2019年5月31日 (金)

さまざまな事情

大学病院のウラは墓場(久坂部羊著、幻冬舎刊)」という本を読みました。

タイトルからも想像できるように大学病院の問題点を暴露した本になります。

大学病院なら安心だという世間的常識に警鐘を鳴らしたいという意図があるのだと思われます。

ただ、2006年刊行と既に十数年が経っていて、この手の暴露本的な性質を考慮するとここで紹介するには少々賞味期限切れと言えるかもしれません。
ある問題は解消されたけど、他の問題が生まれているなど、事情が少し変わっている可能性もあります。
ですが、ここでは大学病院の実態を掘り下げたいのではなく、一般的な事例として紹介したかったので、多少のズレは問題ないと考えました。
個人も組織も良いことであれ悪いことであれ、ある事象が起こるのはそう動かざるを得なくなるさまざまな事情があるからだということが、この本を読んだ個人的な感想です。

 

大学病院には診療だけでなく、教育や研究といった目的もあります。
新しい治療法を研究することやお医者さんを育てることは将来的には患者さんに還元される可能性がありますが、その時々の患者さんからすると今のベストの診療だけを期待するのが当然のことかもしれません(具体例でいうと、本の中で人体実験と表現されている部分がそれにあたります。未熟な医師の練習や新しい治療法や薬の試験などのことです)。
どうやら昔は診療よりも研究・教育が重視されていたそうですが、世間的圧力から現在は診療に力を入れざるを得なくなっているとのことです。
多少の世間的圧力自体は悪いことではないと思いますが、かといってそればかりに囚われると研究・教育もおろそかになってしまうのです。
研究・教育・診療のバランスをとるのは簡単ではなさそうです。
このような事情は理解できるところですが、残念なのは派閥争いや出世争いなどの政治的、経済的力学に重点が置かれるケースが見られることです。
残念と言いつつも、大学病院などの医療分野に限らず、例えば役所でも会社でもどんな組織でもあることなので、野放しにされてほしくはありませんが(世間的監視がそこそこ必要)、ある程度は仕方のないことだと思っています。
以前、私がいた会社でも、仕事が大好きな人、出世しか頭にない人、毎日をたんたんと過ごしたい人、トラブルになると元気になる人、遊び命の人、お金しか興味ない人、とさまざまです。
これが人間…ですよね。
会社としては、そういった中でものにしろサービスにしろベストなものを作り出さなければなりませんが、そこにいる人は仕事だと理解しつつもそれぞれの思惑が優先されることもあるため、現実としては真のベストにはなりえません。
大学病院だってそれは同じだと思います。
人間の集まりなのですから。
本では問題点ばかりが強調されがちですが、実際には良いところも悪いところもあるのではないかと思っています(人間には信頼できるところもあります)。

 

個人的な大学病院のイメージとしては、手術が強い、待たされる、権威主義的で患者が口を挟む余地がない、といったものあります(実際に診てもらった経験はなく真実かどうかは不明ですが…大きい総合病院のイメージもかぶっているかも)。
開業医は当たり外れが大きくて、大学病院はとんでもないお医者さんに当たらない(平均化される、というより、ボトムアップされている)、というイメージもあります。
アトピー治療に関しては、流れ作業で薬の量、強さを調節するだけ(失礼かな…)といったイメージですね。
アトピー治療については開業医に対するイメージと差はそれほどないのですが、開業医の場合は同じ先生に診てもらえると思うので診察に中長期的視点が生まれると思っています(大学病院だとその日によって先生が違ったり、異動などで同じ先生に診てもらえないといったイメージがあります。もちろんカルテで解るはずですが実感の面で劣るかなと…)。
付け加えると、私がこのブログでよく取り上げるステロイドの問題については、大学病院の先生よりも開業医の先生の方が実態をよくご存知ではないかと想像しています。
ただ、実態に則した治療になっているかは別の話ですが…

 

「大学病院の外科医たちは、手術で治せる見込みのある患者には意欲を燃やすが、手遅れの患者やがんの再発の患者にはまるで興味を示さなかった。それは裏を返せば、病気を治すことへの意欲と使命感の表れだろう。しかし、治らないと判断された患者も、石の助けを必要としているのは同じではないのか。」
これはこの本からの引用です(個人的にはすべての外科医がそうだとは思いませんが…)
同様のことが皮膚科でも言えるような気がします。
長年アトピーで苦しんでいる患者などは診たくないのだろうと。
初期のアトピー患者ならステロイド外用薬を出せば、ほとんどの場合あっさりと症状が消えます。
バシッと結果が出て、患者にも喜ばれ、お医者さんは鼻高々です。
その後、もし何かあれば後任にバトンタッチでしょうか。
治らない患者に見限られるのは計算のうちだけれど、診察し難くなるのは困るので、定期的に脱ステ医とアトピービジネス叩きは誰かに(自分ではなく)してもらいたい、といったところが本音かもしれません。

 

もう一つ「研究は治療に結びつかない」という項から引用します。
「研究の内容が治療に直結していれば、まだしも医師の気持は患者に向かうだろう。〜略〜 医学は大きく分けて、基礎医学と臨床医学に分かれる。〜略〜 臨床の教授や助教授も、書く論文はほとんどが基礎医学の分野なのだ。〜略〜 本音として、臨床の教授が基礎医学の論文を書くのは、書きやすいからである。臨床は複雑で、データを集めるのに時間と手間がかかる。」
ここで言っている臨床研究におけるデータ収集などは長くても一、ニ年くらいだと思います。
それくらいの臨床データでもなかなか納得できるデータが出ないこともあるのに、私がよく言っている十数年後のステロイドの効き具合なんて話は、研究対象にすらならないはずです(そんな悠長な研究などできない…)。
”標準的なアトピー治療”を長年受けてこじらせた人は、さまざまな事情によって治療対象としても研究対象としても、敬遠されるのかもしれません(文句さえ言わなければ、治療対象としては良いお客様かもしれませんが…)。
ちなみに…、うがった推測かもしれませんが、臨床研究じゃなくても基礎研究でそれなりにステロイド外用剤の問題点は解るか、もしくは、既に解っているような気がしているのですが…

 

実態として、こじらせている人はたくさんいると思います。
私は別にステロイド外用剤だけを悪者にしたいのではありません。
そういう人たちがなぜそうなったのか、十分な調査も研究もされているフシがないことが腹立たしいのです。
(実際にはステロイド外用剤の危険性を気づいているフシはありますが…「強めの薬で短期間」を強調するのが最近のトレンドですが、裏を返せば長期間の使用に問題があることになります。それに気づきながら、それでも副作用は怖くないと安全性を強調していますが…)

 

少し寄り道してしまいましたが、今回私が言いたかったことは、大学病院だから大丈夫とか、良く売れている本だから正しいとか、人気のあるお医者さんだから信頼できるとか、そういったことだけを鵜呑みにするのは危険だということです。
それぞれさまざまな事情をお持ちですから。

 

 

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