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2016年5月11日 (水)

ステロイドの顔(その2)

かなり前になりますが、「ステロイドの顔」という記事を書きました。
これは、ステロイド外用剤の構造式を紹介するものでした。
その構造式を見ると、ランクの強いステロイドの方がこわそーな顔をしているという半分ジョークの記事でした。

先日、通りすがりの薬学生さんが、この記事に関してコメントをくださいまして、私自身久しぶりにこの記事を思い出すことになりました。
そのコメントの紹介という形で以下の記事を書いたのですが、それに伴い新たな疑問が湧きました。
それは内服薬のステロイドの顔はどんな顔なのかということです。
通りすがりのステ談義(その1)
通りすがりのステ談義(その2)
通りすがりのステ談義(その3)

本題に入る前に一つおことわりです。
今まで糖質コルチコイド=コルチゾールのように表記・説明することがありましたが、それは正確ではありませんでした。
糖質コルチコイドは副腎皮質で作られるホルモンのうちの一種の一般的な呼び方です。
コルチゾールはその糖質コルチコイドと呼ばれるホルモンのうちの一種で具体的な物質名になります(ヒドロコルチゾンとも言うそうです)。
つまり、コルチゾールは糖質コルチコイドであるけれども、他にも糖質コルチコイドはあると言うことです。
ちなみに生体内では糖質コルチコイド活性の約95%がコルチゾールだそうです。

では、本題に入ります。
代表的なステロイド内服薬は以下のような感じでしょうか。
今回も、商品名表記にします。
クリックしていただければ、顔(構造式)がわかります。

コートリル
プレドニン
メドロール
デカドロン
リンデロン

ちなみにWikipediaでコルチゾールを見てもらうと、コートリルと同じだと言うことがわかります。
つまり、コートリルは人間が体内で作るホルモンと同じ物質だということになります。

このコートリルを基準にした抗炎症作用の強さもわかっていて、
    プレドニン    :4倍
    メドロール    :5倍
    デガドロン    :30倍
    リンデロン    :30倍
だそうです。

また、「通りすがりのステ談義(その2)」や「通りすがりのステ談義(その3)」でステロイド外用剤のランクによる半減期がわからないという話をしましたが、ステロイド内服薬の方は情報として、はっきりと公になっています。
当然といえば当然でステロイドに限らず内服薬というのはそれが投薬間隔の指標の一つになるからです。
逆に言うと、外用剤の方は体内に吸収されることをあまり考慮されていない、もしくは、微量なため無視されていると考えて良いかもしれません。
「大体、大丈夫だろう」とか、「影響なんかある訳ない」という感覚なのでしょうか。
半減期は
    コートリル    :8~12時間
    プレドニン    :12~26時間
    メドロール    :12~26時間
    デガドロン    :36~54時間
    リンデロン    :36~54時間
です。
抗炎症作用の強さと関連性はあるようですね。
ということはもしかすると前回「通りすがりのステ談義(その3)」で私が述べた「繰り返し作用を起こしているステロイドは血液にない」という懸念は的はずれなのかもしれません。どうやって半減期を調べるのかにもよると思いますが、血中濃度で測っているとすれば、このように抗炎症作用が強いことが半減期に比例するように現れているのは、作用を繰り返した上でその役目を終え、血液に流れ、肝臓を通って代謝・排出されるという一連の流れに現れていると考えるのが妥当のような気がします。

ここからが今回の本題になります。
このステロイド内服薬とステロイド外用剤を比べてみたいと思います。
以下に「ステロイドの顔」で紹介した最強ランクのステロイド外用剤のデルモベートに再登場してもらいます。

デルモベート

通りすがりの薬学生さんのコメント(その2)」で通りすがりの薬学生さんは肝臓での水酸化によって水に溶けやすくなることによって排出しやすくなり、また、細胞に入りにくくなると言われました。
また、FやClは極性が強いとも言われました。

リンデロンとデルモベートを比べるとデルモベートの方が水酸基が二つ少ないことがわかります。
このことはデルモベートは元々排出しづらい構造だと言えるのかもしれません。
リンデロンとデルモベートはFの数は同じですが、デルモベートにはClがついています。
このことは抗炎症作用などの強さにつながるのかもしれません。
こういう化学物質は形もその反応に大きく関わっているそうなので数で一概に比較できる訳ではないのかもしれませんが、パッと見た感じでは、その点が大きな違いでしょうか(その他にも=Oの違いもありますね。おそらくこれら枝葉以外の形でステロイドという性質が決まり、これら枝葉の違いは極性の違い、つまり強さの違いになるのだと思います。見ただけでどれほど違うかはわかりませんが…)

先ほど抗炎症作用の強さという言葉を使いましたが、これは生理的活性(通りすがりの薬学生さんも使いました)とも言うようです。
このデルモベートの生理的活性はなんと1087倍だそうです(私が読んだ本では血管収縮指数から算出していました。おそらく、血管収縮指数というものが測定値として存在していて、生理的活性はそこから推測される値なのだと思います)。
ケタ違いとはこのことですね。
もし、このデルモベートで内服薬を作ったら…おそらく取扱い不能のどえらい内服薬になりそうです(だから作らないんでしょうが…ちなみにデルモベートは劇薬だそうです)。
ちなみに、喘息で使われる吸入剤のフルタイドは544倍だそうです(デルモベートほどではありませんが、なかなかのものです。濃度の違いもあるのかもしれませんが外用剤よりも吸入剤の方が体内に取り込まれやすそうなので大丈夫かと思ってしまいます)。

私がステロイドで症状を抑えきれなくなっていた時期はこのデルモベートをバンバン塗っていました(2週間に1回の診察では、5グラムのチューブを束でもらっていました。おそらく5~6本)。
脱ステしたとき、いくらコルチゾール産生能力が正常範囲だったとしても、1087倍のパワーでも抑えきれなかったものを抑えられるはずはありませんね。

あるケースを用いて、リンデロンとデルモベートの体内に入る量を単純計算し、この値を参考にして両者を比較してみます。

○リンデロン
具体的な使用例を知らないため、薬の用法に書かれているものを参考にしたいと思います。
用法には一日0.5~8ミリグラムを1~4回に分けて飲むと書かれていました。
一錠0.5ミリグラム(錠剤の重さではなく、錠剤に含まれるリンデロンの量です)を一日2回服用したとします(計算しやすい値を選びましたただ、症状にもよるのかもしれませんが、半減期の時間が長いので、この薬はだらだらと長く使われないと想像します。これはデルモベートと同じような位置づけの薬なのかもしれません。長期利用はプレドニンあたりになるような気がします)。
    0.5ミリグラム/回×2回=1ミリグラム

○デルモベート
デルモベート軟膏は1グラム中0.5ミリグラムデルモベートが含まれています。
アトピーにおける外用剤の塗布量は「フィンガーチップユニット(FTU)」という考え方で算出します。
フィンガーチップユニットとは大人の手のひら2枚の広さに対して、大人の人差し指の第一関節までの量のことでおよそ0.5グラムになります。
今回のケースでは、肘窩と膝窩にアトピーの炎症があり、それぞれ大人の手のひらほどの炎症だとします。
一日2回塗布するケースで考えてみます(部位の範囲としては少なめですが、炎症はしつこく症状を抑えるにはデルモベートを使わざるを得ない状況なので、中程度から重傷に差し掛かりそうなアトピーと言えるでしょうか)。
肘窩と膝窩は左右あるので全部で大人の手のひら4枚になります。
2枚で1FTUですから、4枚で2FTUです。
1FTUは0.5グラムですから、1回の塗布量は0.5グラム/FTU×2FTU=1グラムになります。
1グラム中に0.5ミリグラムのデルモベートが含まれているので、体内への吸収率を10%とすると(通りすがりの薬学生さんのコメントを参考にしました)、一日あたりの体内へのデルモベート吸収量は
    0.5ミリグラム/回×2回×(10/100)=0.1ミリグラム
となります(これもまた分かりやすい値です)。
※吸収率は部位によって違いますが、通りすがりの薬学生さんが示してくれた値との関係は不明なので、この計算では無視することとします。

上記の例で一日の体内摂取量をまとめると、
    リンデロン    :1ミリグラム
    デルモベート:0.1ミリグラム
となります。
ちょうど10分の1ですね(って、そうしたのですがとはいえ両方とも妥当な無理のない例だとは思います)
これに、先ほどの生理的活性をかけあわしてみます。
リンデロン:1×30=30
デルモベート:0.1×1087=108.7

上記の特定の例の比較ではありますが、外用剤のデルモベートの方が内服薬のリンデロンよりおよそ3.6倍の影響力を持つことになります。
(速報)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」で強ランクのステロイド外用剤で副腎萎縮が報告されていることを紹介しましたが、この数字を見れば、あり得ないことでもなさそうです(この数字をそのまま信じれば副腎萎縮があってもおかしくないのですが、「他に外用剤特有の要因が何かあると考慮したとしても」というニュアンスを含むとお考えください)。
今思い出せば、デルモベートをバンバン使っていたのは無謀だったと今更ながら思います。
最近でも、私の時みたいに一度に大量のデルモベートを処方するお医者さんはいるのでしょうか?

ちなみに、抗炎症作用(生理的活性)が強いということは、量が少なくてもその作用が現れるということなので、血液中にほとんど検出されなかったとしても身体に作用し続けているという私が懸念したことはあり得るのかもしれません(コルチゾールの1000分の1の量で同等の力を持つのですから)。

素人の単純計算ではありますが、最強のデルモベートは強い内服薬のリンデロンに匹敵かそれ以上の力を持つものであると推測できました。
人によっては、少量でよく効く素晴らしい薬だと考える人がいるかもしれませんが、すでに内服薬の副作用の怖さはごく標準的なお医者さんの間でも認めない人はいないくらいです。
アトピーで使われる強いステロイド外用剤も内服薬と同じくらい慎重に使われるべきだと思います。
ただし、これは私の中の客観的視点からの控えめな感想であって、主観的な意見を述べるとデルモベートの使用などあり得ないことを付け加えておきます。

 

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コメント

よい記事、ありがとうございます!

そういえば、気になるんですが「デガドロン」は英語で何というんですかね?

rinaさん

コメントありがとうございます。

> よい記事、ありがとうございます!
そう言っていただけるとうれしいです。
改めて読み返すと、わかりづらいところも多々あるような気がします。
もっとわかりやすく書けたのにと思います。
辛抱強く読んでくださったものと…
感謝感謝ですm(_ _)m

> そういえば、気になるんですが「デガドロン」は英語で何というんですかね?
これですが…おそらく…
Dexamethasone sodium phosphate
だと思います。
ちなみに一般名は
デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム
です。
こちらを参考にしました。
http://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057154
よろしくお願いします。

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